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確かに本田さんの行動のお陰で、私と忍くんは本音をぶつけ合えて……。
最終的に心を通わせることが出来たけど。
でもそれは、あくまで結果論であって、必ず上手くいったっていう保証は何もない。
むしろ、余計に拗れてしまう結果にもなっていたかもしれなくて。
──── それを思うと、素直に本田さんにお礼を言う気持ちにはなれなかった。
「………古川さんにも、自分のタイミングがあったんじゃないですか」
最後の辻の目前まで来て、私はポツリと言葉を漏らした。
本田さんは静かに足を止める。
それに倣って私も足を止め、くるっと本田さんを振り返った。
「何の心構えもなく恋を失うのは、本当に辛いんです。……私はそれ、よくわかるから……」
本田さんは、ハッとしたように目を見張る。
透さんが居なくなったあの日のことを思い出して、私の胸は軋むような痛みを覚えた。
「私の場合と古川さんの場合は意味が違うかもしれないけど……。でも、辛いことには変わりはないはずで……」
「……………」
「もし薄々気付いてたんなら尚更……こんな強引なやり方は、よくなかったと思います……」
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