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まだ開封していなかったコーヒーの缶を、私はぎゅっと両手で握りしめる。
手袋ごしでも感じていた温もりは、今はもうすっかり無くなってしまっていた。
「たとえ失恋するにしても、自分の気持ちにケリがついてからの失恋と、そうじゃない時の失恋だと……意味合いが全く違うような気がして……」
「……………」
「無理矢理終わらされた恋は、かえって想いが残ってしまうんじゃないでしょうか……」
最後まで本田さんは、黙って私の話に耳を傾けてくれていた。
──── 訥々とだけれども。
言いたいことは、全部言えた気がする……。
本田さんがあまりにもじっと凝視してくるので、何だかいたたまれなくなった私は思わず目を逸らして俯いてしまった。
………な、なんだろう。
怒らせちゃったんだろうか。
──── そんな不安をよそに、本田さんはふっと声を漏らして笑顔になった。
「真白ちゃんは、強くて優しいね」
「…………え?」
「始めは暗い子だなー、と思ったけど。……うん、忍が惚れるのも納得だわ」
顔を上げて眉を寄せると、本田さんは何やら満足げにうんうん、と言って頷いていた。
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