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不安げに本田さんの顔を見上げると、本田さんは屈託なくニッコリと微笑んだ。
悔しいけど、キッパリ大丈夫だって言われて、私は心なしかホッとしてしまう。
そう……だよね。
忍くんなら、大丈夫だよね。
「まぁさすがに何にもないとは思うけど。もしなんか困ったことあったら、いつでも連絡して?」
「え?」
「渡したでしょ、連絡先」
「……………」
──── そう言えばあの紙、どこにやったっけ?
あのあとのドサクサに紛れて、すっかり忘れてた。
「………いえ。……あれは、破って捨てました」
「ええっ!? 酷くないっ!?」
にべもなく言うと、本田さんはさすがに傷付いたような声を出した。
ホントはそんなことしてないけど。
困ったことがあったとしても、私は全部忍くんに相談するから。
本田さんに連絡することは、多分一生ないだろう……。
「ちぇー。まぁいっかー。影で連絡取ってるの忍にバレたら大変だしねー」
はーっと大きな溜め息を付きながら、本田さんは肩をすくめる。
その様子が何となく可笑しくて、私はついクスッと笑ってしまった。
すると本田さんは『お』と言って、私の顔を覗き込むように膝を折った。
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