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「初めて見た」
「え?」
「真白ちゃんの、作り笑いじゃない笑顔」
言われて思わず、私はバッと両手で頬を押さえる。
バレバレだったんだ、と思ったら、カアッと一気に顔に熱が上ってしまった。
「いいじゃん、可愛い。ずっとそうやって笑ってなよ。忍もその笑顔見ると、やる気出るよ」
「…………」
「そういや今日のコンペも、頑張ってたなーアイツ」
私はハッと息を飲む。
思わず無意識に、本田さんのコートの裾を掴んでしまった。
「ど、どうだったんですか、コンペは!?」
「うん。評価はよかったっぽいよ? 皆アイツの急成長にびっくりしてた」
「……………」
身体中の力が抜けて、私はほうっと息をつく。
本田さんがクスクス笑い出したので、私は我に返って慌てて彼から手を離した。
「忍のドルチェ、選ばれるといーね」
そう言うと本田さんはポン、と私の頭に手を置いてから、そのままバイバイ、と手を振った。
私はハッとして、急いで頭を下げる。
「お、送っていただいて、ありがとうございました」
「いーえ。じゃあ、おやすみー」
最後まで飄々とした態度を崩さず、本田さんは踵を返して歩き始めた。
その後ろ姿を見つめながら、私は貰った缶コーヒーを両手で包み込む。
やっぱり苦手なタイプの人だけど。
会った時と今では、本田さんの印象は全然違うものに変わっていた。
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