dieci

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何とかそれを堪え、私はパジャマの胸元をぎゅっと握りしめる。 「ホ……ホントに? ホントに忍くんのドルチェが選ばれたの?」 『………うん。最後まで意見は分かれたみたいなんだけど、最終的に俺のに決まったって』 「じゃあ……クリスマス、ビアンカにあのドルチェが出るんだ」 『ん。そうだよ』 ホッとしたのと、嬉しいのとが相まって。 気が付けば両目から、涙が溢れ出していた。 たまらず口元を押さえ、それを堪えようとする。 「お、おめでとう……。ホントにおめでとう。……忍くん、すっごく頑張ってたもんね」 『真白さんのおかげだよ。いっぱい協力してくれた』 「そんなことない。私は食べただけだもん。……忍くんの努力の成果だよ」 涙を手の甲で拭いながら、私は嗚咽混じりに答えた。 「クリスマス、絶対食べに行くからね。早速明日、予約する」 『え。……マジで?』 「うん。カップルじゃなくて目立つかもだけど……」 鼻を啜りながら言うと、忍くんはクスッと電話口で吹き出した。 『じゃあさ。……当日は無理だけど、別の日に二人でクリスマスしよっか』 思いがけない忍くんの言葉に、私は驚いて大きく目を見開いた。   
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