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「でも、ま、忍くんのお祝いの前に、まずは真白におめでとう、だね」
「………え?」
「7年ぶりの恋が上手くいって、よかったね」
軽く目を見張ると、ハラちゃんは頬杖をつきながらニコッと嬉しそうに微笑んだ。
「真白の葛藤とかそういうの、全部側で見てたからさ。素直に嬉しいよ」
「…………ハラちゃん」
「これできっと、透さんも安心だね」
うってかわっての温かい言葉に、私の目頭がぐっと熱くなる。
………腫れ物に触るように周りに扱われるなか。
ハラちゃんだけは、本音で私に接してくれて。
たまにぶつけられる言葉が正論すぎて、胸が痛い時もあったけど。
でもホントは、凄くそれが有り難かった。
「………ありがとう。……ハラちゃん」
「あーもう、しんみりしないでよー」
「………だ、だって」
「言っとくけど、付き合ってからの方が実は色々あるんだからね」
目元を拭う私の頭をぽんぽん、と優しく撫でながら、ハラちゃんはそっと苦笑した。
私は鼻を啜りながら、こくりと頷く。
「………うん。わかってる」
キッパリと答えると、ハラちゃんはもう一度ニッコリ笑い、ビールのジョッキを手にした。
「それじゃあ、真白の新しい恋に乾杯」
それを聞いて、私も慌ててそれを手にして。
ありがとう、と呟きながら、カチンと互いのジョッキを合わせた。
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