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お店を出てハラちゃんと別れた時には、時間は11時を回っていた。
さすがに遅いので、私はロータリーのタクシー乗り場へ向かう。
金曜日だからか、そろそろ忘年会シーズンだからかはわからないけど、いつもより乗り場は混雑しているような気がした。
(………寒いなー……)
列の一番後ろに並びながら、寒さで首をすくめる。
ほどよく酔ってポカポカしていた体が、一気に冷めていくような感覚を覚えた。
(もうコンペは、終わってるよね……)
次々に何処からか帰ってきて列をなすタクシーのテールランプをぼんやり見つめながら、私は忍くんのことを思う。
忍くん……どうだったかな。
ちゃんと実力、発揮出来たかな。
──── 昨日のあのドルチェ、選ばれるといいな。
「あっれぇ? 真白ちゃんじゃない?」
忍くんのことを考えて少しまた体が温まってきたかと思った、その矢先。
私の心と反比例するかのような、軽い調子の声が背後から聞こえてきた。
「……………」
嫌な予感を覚えて恐る恐る振り返ると。
こちらに向かってヒラヒラと手を振る、本田さんの姿がそこにあった。
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