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「ちょっと……何してるの、真白!?」
玄関でブーツを履いていると、物音に気付いたお母さんがリビングから飛び出してきた。
お父さんはどうやら、今入浴中らしい。
履き終わった私はスックと立ち上がり、くるっとお母さんを振り返った。
「ちょっと出掛けてくる」
「な……。こんな時間に何バカなこと言ってるの!」
「………でも」
「最近あなた、どこかおかしいわよ? ……あんまり聞かないようにはしてたけど……」
お母さんの顔が、不安げに曇る。
──── 透さんのことがあってから、二人にはいつもこんな顔をさせていた。
心配してくれてるのをわかっていて、私は気付かないふりをして。
ずっとお互い、奥の方まで踏み込まなかった。
でも今は、ちゃんと言いたい。
私は前に進めたんだよって……お母さんに言いたい。
「──── 私、好きな人が出来たの!」
大きな声で叫ぶと、お母さんは驚いたように目を見張った。
私はお母さんの顔を見上げながら、持っていたプレゼントをぎゅっと胸に抱きしめた。
「7年かかって、やっと前に進めたの! ……何も言わなくて心配かけたのは悪かったって思ってる。……でも、おかしかったのは恋してたからなの!」
「……………」
「今その人に会いたいの! 今じゃなきゃダメなの!」
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