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「……………」
お母さんは始め、私が何を言っているのか理解できていないみたいだった。
いつも深い話をすることから逃げ腰だった私が、真っ直ぐに凛とお母さんを見上げているせいか、困惑したようにウロウロと瞳が泳ぐ。
「………お願いします。……行かせてください」
今度はしっかりと落ち着いた声で言い、私はお母さんに向かって深く頭を下げた。
「……………」
──── しばらくして。
頭上から、ハアッと大きな溜め息が聞こえてきて、私は恐る恐る顔を上げた。
目を瞑って首を横に振るお母さんが視界に映る。
それは、ダメっていう否定的なものではなくて……。
仕方ないわねぇ、という、諦めのような仕草だった。
「………これだけは忘れないでちょうだい。……お父さんとお母さんは、いつだって真白を心配してるのよ」
「……………」
「もう子供じゃないんだから、自分の行動にはちゃんと責任を持つこと。……わかった?」
そう言いながらも、声色は小さい子供を諭すように優しくて。
私は唇を噛み締めながら、コクコクと何度も頷いた。
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