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「………わかった。……約束する」
答えてもう一度私は、その場でペコッと深くお辞儀をした。
玄関のドアに手をかけたところで、真白!とお母さんに呼び止められる。
「帰ったらちゃんと、その人のこと聞かせてちょうだい」
「……………」
私は一瞬躊躇ったけれど、お母さんを見上げながら無言で小さく頷いた。
忍くんが透さんの弟だって聞いたら、二人はどんな反応をするんだろう。
なんでよりによって……って、思うだろうか。
この7年の私を、誰より一番傍で見てきたのはお父さんとお母さんだから。
やっぱり、反対されてしまうのかな……。
忍くんの家に向かって走りながら、私はそんなことを考えていた。
もし反対されたらと思うと怖いけど……いつまでも黙ってる訳にはいかないし。
それに、忍くんへの想いが真剣だからこそ。
──── ちゃんと二人には、認めてもらいたい。
「………はあっ、……はあっ」
10分あまり走り続けて。
私はようやく、忍くんのマンションに辿り着いていた。
息を整えながら、ゆっくりと彼の家のドアを見上げる。
ここにて急に、何故か私は気後れし始めていた。
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