第一章 禁断のゼーンズフト ♯1

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「おはようございますっ!えっ、今日まだ誰も来てないんですか!?」 なんで徒歩通学なのに、毎日毎日ぴっとり同じ時間来られるんだろう、名瀬は。 僕は車通勤だけれど、家を出る時間は気分次第だ。生徒が来る前に音楽室の鍵を開けておければ、それでいいと思っている。 「名瀬、おはよう。雨すごいけど、大丈夫だったか?」 名瀬の方へと歩み寄る。 前髪からは小さな雫が滴り、セーラー服の肩やスカーフ、プリーツスカートの裾はすっかり色を変えている。 「私は大丈夫ですけど、電車遅れてるみたいですよ!駅でアナウンス流れてるの聞いて…。みんな大丈夫かなぁ…。」 自分が濡れていることなどお構いなしで、僕への報告とみんなの心配をし始める。 …さすが、元部長。 「名瀬、教えてくれてありがとな。今日の朝部は無理しないように、メーリングリストでみんなに連絡してあるから、大丈夫だぞ」 僕は生徒のメアドを知らない。学校が管理するメーリングリストのアドレスに送信して、部全員に一括伝達しているのだ。
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