第1章 日常の終わりと共に

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「決まってるだろ。桂木の親父さんの敵をとるんだ。」 将生は唇を噛んで答えた。 「敵って・・・・・・まだ気にしてんのか? そろそろやめろよ。復讐なんて誰も得しない」 「桂木の親父さんは俺を庇って死んだんだ。だから俺は・・・・・・」 将生の駄目なところだ。結構引きずって自分を追い詰めていく。 五年前、俺の両親は名前も知らない他人を庇って死んだ。そのおかげか知らないけど、妹との二人暮らしで困ったことが起こってもすぐに助けが来てくれる。 「綺麗事だけどさ。復讐したらお前と同じような思いをする人がいるかもしれないだろ?」 「最初に殺したのは悪魔だ。悪魔がどんな思いをしようが関係ねぇ」 酷い言いようだけど今の世界だとこれが普通なんだ。悪魔を殺すと報酬まで出る。何十万とか貰えるらしい。 「もういいや。何言っても無駄みたいだし」 「逆になんでお前は平気なんだ? 普通なら殺してやりたいとか思うだろ」 「うーん。そうかなぁ。白の方が大事だし殺したいとか思わないな」 「桂木は冷めてるな。簡単に割り切れるものじゃないぞ」 「割り切ってるわけじゃないよ。実際悪魔のことは嫌いだし」 こんな話をしていると廊下から騒ぎが聞こえてくる。女子がキャーキャー行ってるってことは・・・・・・。 「火野村先輩だ」 将生が呟いた。やっぱりか。こっからは人だかりしか見えないけど火野村先輩を呼ぶ声が聞こえるから確実だ。 そういえば・・・・・・職員室で会ったときは一人だった。いつもはあんなにたくさんいるのに。屋上に向かう時でさえ静かだった。あれも悪魔だからか? 「あの人が悪魔だって言ったらどうする?」 「はっ!? 火野村先輩が悪魔? あの人はどっちかというと天使だな。悪魔はありえねぇ。可愛いから」 こいつ・・・・・・最低だ。お前の復讐の相手は外見で決まるのか? 「そっか・・・・・・、そうだよな。悪魔のはずないよな」 あれは夢だ。そう思おう。そっちの方が気が楽だ。元々悪魔になる気なんてないんだから無視しても問題ないし。 「そろそろ授業が始まるし、準備しようぜ」 この紙は・・・・・・捨てていいか。
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