第1章 日常の終わりと共に

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え・・・・・・? いない・・・・・・? じゃあ誰に呼ばれたんだ? 聞き違いか? 「あなたが桂木君よね?」 誰かから声をかけられた。炎のように赤い髪の女性だ。この人は・・・・・・火野村桜花(ひのむらおうか)先輩だ! この人は元女子校で女子の多い鈴鳴学園の中でも飛び抜けて美人だということで有名な人だ。まさか・・・・・・間近で見れるなんて・・・・・・しかも話しかけられてる! 「えっと・・・・・・あの、その・・・・・・」 やばい、思うように声が出ない。折角話しかけてきてくれたのにカッコ悪すぎる。 「場所を変えた方がいいかしら?」 火野村先輩が微笑んだ。超綺麗だ。これを見るともっと緊張してくる。 「・・・・・・あ・・・・・・その・・・・・・おねがいします」 やっと声が出たと思ったら消えそうなくらい小さい。なんでだ? 頭の中だとこんなに元気なのに声がでないんだ? 屋上に移動した。あれ? 屋上って侵入禁止だったはずだけど・・・・・・。 「ねえあなた、悪魔になってみない?」 「・・・・・・は?」 耳を疑った。悪魔? ・・・・・・どういう意味だ? いや、意味はわかるけど。 「悪魔・・・・・・わからないかしら?」 先輩はさっきからずっと微笑んでいる。まるで俺が同意するって分かってるかのように・・・・・・。 「・・・・・・わかります。あの五年前の・・・・・・」 「ええ、そうよ。空に穴を空けた悪魔よ」 「それになれってどういうことですか?」 相変わらず消えそうな声だ。この人の言ってることもわからない。俺は人間だ、悪魔になんてなれるはずない。 「あなたの存在を悪魔に書き換えるの・・・・・・って言ってもわからないわよね」 「そうですね、わからないです。なのでお断りします」 頭を下げてその場から離れる。はじめて見たけど悪魔って人の姿してるのか。これじゃあ誰が悪魔かわからないな。 「待ちなさい。これを持っていて」 小さい紙切れを渡された。真っ白でなんも書いてない紙だ。捨てたいけど捨てたらなんか怖いことが起こりそうで嫌だ。 「気が変わったらその紙を空に投げなさい。そうすれば私とあなたの契約が成立するわ」
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