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ぼんやりと彼女を見上げると、古川さんは肩をすくめて可笑しそうにクスクスと笑った。
「心配しなくても、傷付いた楢原さんのことは私がたーっぷり慰めてあげますから」
「……………」
「あ、お釣りはどーぞ、取っといてくださいね♪」
言いたいことだけを言うと、古川さんはクルッと踵を返してしまった。
私は何も言えず、ただその後ろ姿を見つめる。
周りの人達がチラチラとこちらを窺っているのがわかったけど、私は涙を止めることが出来なかった。
絶対に負けない……って、勢い込んで来てみたけれど。
蓋を開けてみれば、完敗だった。
彼女は私に何を言われるか全てわかっていて。
その上で、確実に私が忍くんと別れる道を選ぶように、理論武装してきたのだ。
「……………」
胸がギシギシと音を立てて、軋む。
痛くて痛くて、どうしようもなかった。
忍くんとの別れは、もちろん辛い。
でもそれ以上に私の胸を抉ったのは。
──── 私が忍くんにとって疫病神なんだって。
頭のどこかで否定してきた真実を、真っ向から突き付けられたことだった。
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