undici-2

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ここでようやく、古川さんの言わんとしていることを私は理解した。 要するに古川さんは。 私と忍くんに、別れろと言っているのだ。 別れない限り、今回みたいに忍くんのチャンスをことごとく潰していく、と。 そう言っているのだ。 「……………」 こんな人の言いなりになんか、死んでもなりたくないって思う。 忍くんを失うなんて、絶対に嫌だ。 7年かかって、やっと好きになれた人。 こんな私のこと、ずっと想っていてくれた人。 彼に会えなくなるなんて、絶対に嫌だ。 …………でも。 私のせいで忍くんがこれ以上苦しむのは、もっと嫌だ。 「…………っ」 ぎゅっと瞑った両目から、涙がポロポロと零れ落ちる。 ビアンカ以上のレストランなんて、そうそうない。 ビアンカのコンペに選ばれることは、凄いステータスだって忍くんも言っていた。 あんなに普段は口数が少ないのに、ドルチェのことになったら途端に饒舌になって。 気だるげな表情は一変して、キラキラと輝いて。 興奮したら思わずメレンゲ作っちゃうぐらい、今の仕事が大好きな忍くんから。 未来を摘んでしまう権利なんて、私にはない。   今の立場を捨ててまで、私を選んでほしいとは思わない──…。  
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