undici-2

22/23
271人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「あ、誤解しないでくださいね! 別に私が傷付いたから、報復に楢原さんも傷付けてやろう、なんて思ってませんから」 「……………」 「だってその方が楢原さんも想いを残すことなく綺麗サッパリ忘れられると思うんですよねー」 絶句する私の前で、古川さんはコロコロと小気味良く笑った。 「初恋は特別っていうし、楢原さんの場合ずっと片想いだった訳だから、その想いが燻って勘違いしちゃっただけだと思うんですよ。……今も真白さんのこと好き、みたいな?」 「……………」 「だからこっぴどく振られた方が、楢原さんも目を覚ますんじゃないかなって」 フフッと声を漏らして笑ったあと、古川さんはバッグの中をゴソゴソと探り始めた。 財布を出して、中から千円札を取り出す。 「明日も仕事なんで、もう帰りますね」 「……………」 「それじゃ、楢原さんから失恋話を聞くの、楽しみにしてまーす」 そう言うとテーブルの上にお金を置き、古川さんはコートを手にしてサッと立ち上がった。  
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!