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【双眼】
「お前、まだ出てこないのかよ」
「そりゃ、お前。まだ入って10秒だぞ」
「いいや二十秒はもう経ってる。このやりとりをしてるからな」
「おいおい、そんなこと言わないでくれよ」
「俺だって待ってんだよ」
「慌てさせんな」
「俺のバッテリーが切れそうなんだよ」
「切れたらアレも止まるんじゃね?」
「おいおい、冗談はよせよ。アレを止めるなんてできない。
お前は王様の気分か」
「確かに座っているが王様の気分なんて決して味わえないね、
どちらかというと鞭を打たれている奴隷の顔だ」
「俺は、断頭台の階段を登っている気分だ」
「それは、決意が出来ていて素晴らしいな、ぐぅ」
「素晴らしい? 早くしろってんだ、あああああ」
「うるせぇ、いま一番いいとこなんだよ」
「こっちは、お前よりも発射されるのが早かったんだぞ!!」
「発射ってなんだ? ロケットか? 打ち上げ花火か?」
「くそっ、お前は鬼か、悪魔か」
「うるせーな、久々の対面なんだよこっちは!
お前は、しょっちゅう会ってくれてるじゃねえか」
「ああ、付きまとわれてるよ。王様の椅子が俺を欲しがってんだよ
俺に譲れよ!」
「まるで麻薬中毒者の発言だな。ふぅ、いい気分だぜ」
「あああああ、よこせ! 早くしろ!」
「やだね……」
「あああああああくそぉおおおおおお」
「ひでえな、まるで毒ガスを食らったかのようなうめき声だ」
「ぁっぁっ……あああ」
……終わったな。開けてみるか。
「うわぁ、醜態だな」
そいつは、白目をひん剥いて身体をピクピクとさせてやがる。
実に滑稽なやつだ。
「お前が悪いんだからな」
そう吐き捨てて、俺は白い空間から出た。
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