dodici

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『今日はお父さん飲みに行ってて、迎えに来れないんだって。……だから、よかったら迎えに来てほしいんだけど……』 予備校が終わって。 サーサーと降り続く雨空を見上げながら、私は少しの期待を込めて携帯を強く耳に押し当てた。 朝、お父さんからこの話を聞かされてから。 私はずっと、透さんに迎えを頼もうって決めていた。 タクシーで帰っといで、と言われたのだけど。 透さんに会いたくて会いたくて、仕方がなかったから。 『………わかった。……じゃあ、迎えに行くよ』 少し疲れたような透さんの声が、苦笑混じりに返ってくる。 『ホントに!? いいの!?』 『いいよ。……じゃあ今から行くから、ちょっと待ってて』 『うん!!』 電話を切った私は、その場で大きくガッツポーズをした。 冬休みが始まる前に終わらせなきゃいけないレポートがあるから、と言われて、透さんと会えなくなってから十日あまり。 寂しい思いをずっと我慢していたけど、もうそれも限界だった。   そんな私の我が儘が、後で取り返しのつかないことになるなんて。 この時の私は、夢にも思っていなかった……。  
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