dodici

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『久しぶり』 運転席でそう言って笑った透さんの顔を見て、私はドキリとした。 夜でもわかるぐらい疲れた面差しで、どこか顔色も青白い。 『透さん。……疲れてる? 凄く顔色悪い……』 『んー。……あんまり寝てなくて』 『レポートって、そんなに大変なの?』 『資料が少なくてね。なのに提出枚数が多いから、ちょっと地獄』 そう言って透さんは笑ったけど、そんなに大変な時に彼を呼び出してしまったことに、私は酷い自己嫌悪に陥ってしまった。 『………ごめんなさい』 しゅん、と俯きながら謝ると。 透さんは大きな手で、ふわっと私の頭を撫でてくれた。 『俺も会いたかったし、息抜きしたかったから。気にすんな』 『………でも』 『いいの。大丈夫』 くしゃくしゃっと髪を掻き回して、透さんは優しく微笑んだ。  
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