dodici

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『………しろ。………真白』 無のように真っ暗な世界の中で、不意に私の名を呼ぶ声が聞こえた。 何の迷いもなく、私はその声の主を透さんだと認識する。 『透さん!』 叫んで、辺りを見渡すけれど、真っ暗で何も見えない。 急激に不安に襲われ、私は手探りでその姿を探した。 その時、その手を誰かにグッと掴まれた。 その手の温もりにホッとして、私は強く握り返す。 『ここにいたの……。透さん……』 呟いた瞬間、視界がサーッと開けた。 真っ暗な世界から突然目映いくらいの真っ白な世界に、私は目を細める。 『──── 真白!!』 すぐ横で叫ぶように名前を呼ばれて、私はぼんやりとそちらに顔を向けた。 透さんだと思い込んでいた手の主はお母さんで。 何故かお母さんは、私の顔を覗き込みながらボロボロと涙を零していた。  
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