tredici

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自分のことよりも、まだ私のことを気にかけてくれる優しい言葉に、胸が締め付けられる。 ………けれど同時に、どうしようもないくらい、いたたまれない気持ちになった。 「…………大丈夫」 何とか両足に力を込め、私はふらりと立ち上がる。 そうして、平気だと示すために両足を軽くはたいた。 私自身に怪我はなかったけれど、このまま病院に付き添いたいと思った。 ………でも、私を激しく睨み付ける古川さんの目が。 『これ以上、この人に近付くな』と、ハッキリ告げていた。 「怪我もないし、大丈夫だから……早く病院に行って」 彼を安心させる為に、私は懸命に笑顔を作った。 大嫌いな、雨だけど。 涙を誤魔化してくれる今だけは、有り難いと思えた。 「……………」 忍くんは何か物言いたげに、私の顔を見つめてくる。 けれど彼を支えている古川さんが、すかさず踵を返して歩き始めようとした。 ハッとしたように、忍くんは古川さんの顔を見下ろした。  
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