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ゾッとして、思わず両手で顔を覆ったその時だった。
コンコン、と休憩室がノックされた。
私はハッと顔を上げる。
「九石さん。本田さんって方が面会に来られてますけど」
ひょこっとドアから同僚が顔を覗かせて言った言葉を聞いて、私はガタッと椅子を蹴る勢いで立ち上がった。
(………本田さん……!)
慌ててテーブルの上を片付け、休憩室を飛び出す。
勢い込んで館内に戻ると、カウンターのところに立っていた本田さんが私を見てヒラヒラと手を振った。
「こんちはー」
電話を無視したことを怒っている様子もなく、私はホッとする。
同僚の視線をビシビシと感じたので、私は慌てて本田さんをロビーの方へと引っ張っていった。
「ごめんねー、急に来て。大丈夫だった?」
自販機横の長椅子に腰を下ろしながら、本田さんがそう聞いてきた。
「はい、ちょうど昼休憩だったので……」
「そ? よかった」
「本田さんは、お仕事は……」
「うん、今から行くよー。さっきまで忍のお見舞い行ってて、帰りにちょっと寄ったんだ」
お見舞いと聞いて、私は本田さんの顔を振り仰いだ。
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