tredici

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ゾッとして、思わず両手で顔を覆ったその時だった。 コンコン、と休憩室がノックされた。 私はハッと顔を上げる。 「九石さん。本田さんって方が面会に来られてますけど」 ひょこっとドアから同僚が顔を覗かせて言った言葉を聞いて、私はガタッと椅子を蹴る勢いで立ち上がった。 (………本田さん……!) 慌ててテーブルの上を片付け、休憩室を飛び出す。 勢い込んで館内に戻ると、カウンターのところに立っていた本田さんが私を見てヒラヒラと手を振った。 「こんちはー」 電話を無視したことを怒っている様子もなく、私はホッとする。 同僚の視線をビシビシと感じたので、私は慌てて本田さんをロビーの方へと引っ張っていった。 「ごめんねー、急に来て。大丈夫だった?」 自販機横の長椅子に腰を下ろしながら、本田さんがそう聞いてきた。 「はい、ちょうど昼休憩だったので……」 「そ? よかった」 「本田さんは、お仕事は……」 「うん、今から行くよー。さっきまで忍のお見舞い行ってて、帰りにちょっと寄ったんだ」 お見舞いと聞いて、私は本田さんの顔を振り仰いだ。  
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