tredici-2

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(やっぱりもう、お店に出てるのかな……) 電気の点いていない忍くんの部屋を外から見つめながら、私は小さく溜め息をついた。 念のために家の前まで行き、呼び鈴を鳴らしてみたものの応答はなく。 肩を落としながら、私はマンションを出た。 (ビアンカって確か……10時までの営業だったよね) スマホの時間を見ると、9時を少し回ったところ。 ここでずっと待っているのも何となく気が引けて、私はビアンカの方向へと足を向けた。 一旦緊張が緩んだせいか、一気に寒さが全身を襲う。 マフラーで口元を隠すようにして、私はトボトボとビアンカへの道を歩いた。 店の前に着くと、ちょうど中から一組のカップルが出てくるところだった。 さむーい、と言いながら、女性が男性の腕に絡み付く。 「最後のドルチェ、美味しかったね」 「うん」 「あんな本格的なの食べた後で、私が作ったチョコとかあげれないよー」 「それとこれとは別だろ」 楽しそうに寄り添いながら、二人は私の前を通り過ぎていった。  
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