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「んあー……」
寝起きは、最悪だった。
なぜかって?
そりゃあもちろん、眠たいときに顔を見たくない人物堂々1位の我が幼馴染み、竜童真咲(リュウドウ マサキ)の顔が目の前にあったからだ。
……それもちよっと動けばぶつかりそうな距離で、だ。
軽いテロである。
もしくは単なる嫌がらせである。
「何がテロよ!嫌がらせよ!亮太がなかなか起きないから起こしに来てあげたんじゃない!」
「なぜわかった……!?」
「声に出てたわよ!……もぅ。」
なんてラノベチックな会話をしてみせるのは、最早毎朝の恒例行事だった。
短い赤髪のツインテールを右へ左へと揺らしながら叫んでくる真咲に平謝りをしながらゆっくりと起き上がる。
眠い。
すさまじく眠い。
………………。
「ってなんでまた寝るのよ!」
「いててっ!」
真咲がプロもビックリの完璧なドロップキックをかまして来る。
尋常じゃなく痛てぇ。
まったく、女らしいのはその外見だけ――
「ん?」
「じゃないな、うん。ってあれ?また声に出てた?」
自分自身自覚はないのだが、時折頭の中の台詞が声に出ていることがあるようだ。
気を付けねばならない。
さっきから真咲がものすごい殺気を送ってきてるし。
このままでは命の保証がない。
「命の……って、失礼ね。」
早速声に出ていたことにショックを受けている間も無く、パンパンと手を叩きながら真咲がまるで保護者のように言ってくる。
「まあとにかく、速くご飯食べないと遅刻するわよ。着替えたら降りてきなさい、パンくらい焼いてあげるわ。」
「ん、サンキュウ。」
優しく微笑みながら部屋を出ていく真咲に多大なる感謝と敬意を称す。
にしても、だ。
慎ましい乳房に、引き締まったくびれ、艶やかな髪と、可愛い笑顔。
「やっぱり見た目だけは良いな。」
しばらくして激しい足音と共に扉が勢いよく開け放たれてうんうんとうなずいている俺に真咲のドロップキックが飛んできたのは……まあ。
仕方がないよね。
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