始まりの鐘が鳴るときに

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差江島とは中学の時からの付き合いなのだが、なにかと俺たち幼馴染みに絡んでくる。 今回のような冷やかしは日常茶飯事だった。 「べつに、いちゃついてなんかねぇよ。」 と、その冷やかしに答えるのは、最早お決まりとなっている 。 「いちゃ……いちゃ…………。」 「ん?」 なんか真咲が顔を真っ赤にしてぶつぶつ言ってるんだが……まあ、いいか。 「相変わらず、鈍感だねぇ。」 やれやれ、というふうに言う四神。 そんな言い草に俺の神経が逆撫でられる。 「は?なにがだよ?」 「自分で気づかないと意味がないよ。」 「んだよ、偉そうに。」 「べつにそんなつもりはないよ、鈍感だから鈍感って言ったんだけど。」 「あん?」 「なにかな?」 「ち、ちょっと!止めなさい!」 ちょっと古いヤンキー漫画のようにメンチを切る俺と、優しい笑顔で、しかし明らかな喧嘩腰で話す四神の二人を慌てて止める差江島の姿は、流石は委員長といったところか。 「亮太と、いちゃ、いちゃ……」 まだなにやら真咲は呟いている。 とまあ、これが俺の、いつもの朝の風景である。 だから、俺は気づかなかった。 だから、信じて疑わなかったんだ。 この何でもない日常が、これからも、ずっと、続いていくって――――
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