巡る魂の邂逅

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まだ、夜が明けきらない時間。 真夜中と夜明けの境界の時間。 田舎とも言えず、都会とも言えない町は、まだ眠っていた。 家々の明かりは点くこともなく、暗闇の中に光る街灯が、ぼんやりと辺りを照らしている。 人口がいない割に、車の通行量がやたらと多いせいか、空に瞬く星たちは、その姿をあまり見せてはいなかった。 旧道の一本道がまっすぐ伸びる。 そこから派生するように、細い道がたくさん伸び、住宅街へと繋がってゆく。 かつて、旧道の回りが農地だったことを知る者は少ないだろう。 町の立地上、大きな町を繋ぐ要所という扱いになってからは、農業は急速に寂れた。 車の普及がそれを加速したことを、車社会と当たり前となった今では考える者もいないのだろう。 だが、その時代の名残を残すかのように、古き家をそのまま使っている家もあり、新しい住宅の中に、趣のある和風住宅が建っている場所も何か所かある。 その一つに、とても立派な門構えのお屋敷があった。 木目が美しい門構えは、長い時代を越えてきたことを一目で伝えてくれる。 立派というよりも奥ゆかしさを感じるのも、木目の優しい色合いによるものだろう。 それを潜った先には、小さいながらに美しい庭園が広がっている。 バランスを考えられて植えられた庭木に、小さいながらに鯉が泳ぐ池がとても美しい。 そして、その奥を進んでいくと、なぜか小さな石がちょこんと佇んでいる。 その前には花が供えられていて、まるで何かを祭っているようだ。
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