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「・・・あ、ゴメン。ゴメン。優香」
女子の話題を年心は話す蓮美とは違い反応が薄い優香。そんな彼女を見て、蓮美は何かを察したらしく、口元をちょっとニヤつかせて言う。
「急にどうしたの?」
急にニヤニヤしだす蓮美。いったい、何を思ったのか。
「悪かったわね。“彼氏持ち”の優香には興味のない話だったわよね」
「////!ちょ、蓮美!だ、誰がか、彼氏持ちなの!」
彼氏持ちと言われた優香の顔がみるみる赤くなる。真っ赤になった顔で机を叩き席を立つ、優香を見て蓮美は笑いを堪えていた。
「プ・・・プ、ププププ。恥ずかしがっちゃってェ~。夏休み前から噂になっていたわよ。辻家の当主、辻努と諏訪優香が付き合ってるって!なんだっけ?噂では努に手を引っ張られて校舎から連れ出されたとか。早朝、背負ってもらって保健室に行ったとか」
「////」
優香はプルプルと身体を震わせる。多少の誤解はあるが、どれも事実であった。何も知らぬ人からしてみれば、そう見えても不思議ではない。
誰かに見られたのではないかと警戒していたが、いったい、どこからそのような話が洩れたのだろうか。手を引っ張られ学校から出ていったところはともかく、早朝に努に連れられ保健室にいったことを知っている人は限られた人しかいないというのに。
「ちなみに、この噂の根源は矢子先生だから」
「矢子先生ェェェ!」
犯人はすぐに特定できた。
この噂の根源を生んだのは養護教諭の小々路矢子。思い出してみれば、彼女が一番、面白そうに努と優香の関係を説いていた。人の噂も七十五日というが、夏休み明けで消えるだろうと思っていたのに、消えかけた噂を彼女が再燃焼させた。携帯電話が普及していない、この時代であってもこの手の噂が校内に広がるのに時間は掛からなかった。むしろ、矢子が保健室に生徒が来るたびに、この話をすることで、噂を大きく広げてしまったようだ。
もう一つ、優香に変わったことがあるとすれば、努との関係だろうか。校内で噂されているほど優香と努はカップルというほどに親密な関係ではない。よくて、友達同士、いや逢魔を巡る事件をキッカケにした秘密を共有した者同士と言った方がいいだろう。だが、それを知らない人達には仲のよいカップルに見えてしまう。特に矢子の場合は。
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