気まぐれ風神

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「近寄らないで!」 あまりの恐怖に、そう叫んでしまった。 二人とも口を開けたまま、綺麗な静止画みたいに止まる。 しまった。年上なのに、敬語じゃなかった。 と慌てて「…下さい」と補足したものの、遅かった。 「別に、見たかったわけじゃないから」 佐尾屋さんは、眉間にしわを寄せたまま呟く。 そんな本音なんか知りたくなかったです。むしろ、心内ひとつに閉まってほしいもの。 「違うんです…」 どうしよう。臭いんです。なんて言ったら、傷付く。絶対に。 あたし、考えろ。傷付かない言い訳を。 「ええと。あなたが、気持ち悪いんです」 言った瞬間、体感気温、氷点下マイナス10度の世界。
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