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だからさ、擦れ違う瞬間に顔を一瞬だけあげてみたのだよ。
だけど、相手の顔はちゃんと見えなかった。
辛うじて、香りを鼻でキャッチ。シャンプーとは言い難いから、きっと、香水。
おえっ。酔ってしまいそう。なんかココナッツみたいな感じ。甘い。人工的な香りは大の苦手。
バスとか電車の密封されたところで嗅いだらリバース祭り。
宮子は言った。
「今の人、かっこいいね」
「見損ねた」
それどころじゃなかったよ。ああ。あたしのパンツ……。絶対見られたよね。もう会いたくない。
まぁ、きっと、パンツに気をとられてあたしの顔なんか憶えてるわけがない。
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