18人が本棚に入れています
本棚に追加
それは待望の長男が産まれ、親子三人での生活が始まったばかりの事。
「なぁなぁ、これ何やと思う?」
と、嬉々として夫が何かを持ってきた。
その手に握られているのは、ちょうどサイの角のような形をした、先端の尖った小さな容器。
実はそれが何であるのかは知っていたが、夫の顔を立てる意味でも。
そして関西人としてボケの一つでもかますべきであろうと判断した冬可は、少し考える素振りをした後に口を開いた。
「それってもしかしてトンガリコー「正解は《おしっこブロック》って言ってやな!おちんち○に装着させれば、オムツ替えの時におしっこを飛ばされても、コイツが防いでくれるってワケよ!」」
「………。」
質問に対する答えも。
そして夫のために無理矢理捻り出したボケも、かぶせ気味に押し潰された冬可。
思わず
「テメェ…」
という、地獄の底から湧き上がるような低音ヴォイスが顔を出しそうになったが、夫の無邪気な笑顔を見ていると、そんな気持ちもすぐに薄らいでしまうから不思議なものだ。
「(てゆーか……そんなに役に立つもんなんかなぁ?この金かくし。)」
《おしっこブロック》
という、程よく品のある…
恐らくは制作者が何日も協議を重ねた上に生み出されたネーミングを
《金かくし》
というアラレもないワードで括った冬可。
そんな彼女の懸念は、その夜見事に的中する事となる。
最初のコメントを投稿しよう!