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けして、龍神の心を取り戻したくて、こんなことを言ってるんじゃない。
信じてもらえないかもしれないけれど、
「あさみさんが、龍神と一緒になりたくて、
嘘をついていたら、どうすると?」
龍神に、これ以上、他人の為に犠牲にする人生を歩んでほしくなかったから……。
「父さんみたいなこと、言うんだな」
「……え」
そんな呆れた顔をされても、ちゃんと真実を探して欲しかった。
「親父もそんなことを言ってた。
俺の家の財産目当てだとか何とか……」
「ちがっ……私はそこまで……」
「わかってる」
なのに、
龍神は、昔と変わらない誠実な顔で、
「輝子の言いたいこと、わかってる。
あさみのお腹の子供が、俺の子供じゃないってことも、
ちゃんとわかってる」
全てを受け入れる寛大さを見せつけて、
「……わかってるのに、籍、入れちゃうと?」
「輝子なら、どうする?
身ひとつで、地元を捨ててきた昔の恋人が、自分の子供として育てたいって、
自分と人生を歩みたいって言ってきたら、
輝子は放っておけるか?」
あなたと同じ優しさを 私にも求めてくる。
怪我をしていないのに、
龍神に見つめられた左目が、
とても痛くなった。
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