夏の華

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軽症で済んだ金森くんの病室から、 彼のご両親や、友人たちが安堵の表情を浮かべて次々に退室していく。 その中には、私を知っている人もいて、 「あれ?!摘鳴さんじゃん!」 「いつこっちに戻ってきたと?」 「歌手にならんかったと?!」 龍神の部屋の前から動けない私に、話しかける人もいた。 愛想笑いも出来ない私。 「裕海、輝子って金森の彼女じゃなかったっけ?」 篤くんも不思議そうな顔をして、病院をあとにしていた。 「龍神は………?」 そこに、大きなお腹で、点滴を引っ張りながら病室から抜け出てきたあさみさんが現れた。 そして、 面会謝絶のプレートと、龍神のお父さんからの説明を受けて、 わっ!と 泣き崩れてしまっていた。 「ごめんなさい、ごめんなさい………」 何度も何度も、車椅子のおじさんに謝り、そのうち、担当の看護師さんに連れ戻されていた。 「輝子、お母さん、ご飯の支度もしてなくて、お父さんたち心配しとるから、 一旦、帰るね」 申し訳なさそうにおじさんに頭を下げて、お母さんが帰ってしまうと、 緊迫する廊下に、おじさんと私だけの二人きりになった。 「俺のせいだな………」 たった2年で、人が変わったように痩せてしまった龍神のお父さんもまた、独り言のように、自分を責めていた。 「俺が事故に遭わなかったら、龍神は東京に行って、こんなトラブルに遭遇することも無かったのに………」 私も、あの時にすぐ、 警察に被害を届け出なかったことを とても後悔した。 「異変がありましたら、ナースコールでお呼びください」
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