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土曜日。
「輝子、あとは長与経由しかないよ?」
「しょうがなか!それに乗ろう」
クラスの中で、唯一アニメの話が出来る裕海と、長崎市にあるアニメグッズの店へJRで出掛ける。
田舎とはいえ、シートに座れないほどの人が乗る列車。
「あー、桜……。もうすぐ散るね」
手すりに捕まりながら、外の今にも花びらを落としそうな危うい桜にふたり見とれていた。
「あ!輝子の家」「やだ、見らんで」
カンカンカン……と
列車が通る度に鳴り響き、遮断機が降りる踏切。
その近くに築40年のボロアパートが見える。
「夜とか寝れんちゃない?」
「うん、最終通ったらホッとする」
その一階に私の自宅があるのだ。
貧乏とは言わないけど、
けして裕福ではない我が家。
それが列車に乗った人からは丸見えなのでとても恥ずかしい。
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