桜 と 龍

6/25
前へ
/406ページ
次へ
好きなアニメグッズに持金をつぎ込んだ私は、ホクホクとした気分で列車に乗車していた。 頭の中は、ヒロト様一色。 帰ったら大好きな主題歌を聴きまくろう。 「あそこ、入り口のところに立っとる人。めっちゃカッコいいよー」 そんな私とは違い、裕海の方は何やらリアルの世界でときめきがあった様子。 さっきから、同じ方向ばかり見ている。 「へぇ?」 裕海の″カッコいい″ という人は、 俗っぽくて、大体は私の理想の王子様とはかけ離れている。 あのうちのクラスのモテ男金森くんに密かに思いを寄せているのも、私は知っているけれど、 彼には、イマイチそそられなかった。 「へぇ、じゃなくて!ちゃんと見てさ。K女子の子も見惚れとるけん」 なのに、裕海が肘でツツくから、 チラッとそのリアルの世界ではカッコいいらしい男の方を見る。 ……見て、 私の中で、何かが打ち破られた――――。
/406ページ

最初のコメントを投稿しよう!

293人が本棚に入れています
本棚に追加