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それから、数十分。
諫早駅で多くの人が下車して行く。
随分と席が空いたのに、私はそのリアルヒロト様が見えなくなるシートには座らず、手すりに掴まったままグッズのことも忘れて、その横顔に見とれていた。
「輝子。見すぎ」
「はは…」
一方、リアル好きな人がいる裕海は、
「確かにカッコいいけど、S高の生徒らしくユルいつーか、だらしなかね」
冷静にそのリアルヒロト様を観察しているようだった。
「うん、ちょっと悪ぶっとる」
リアルヒロト様が通うS高校は、県内でもガラが悪い方の私立高校で、度々暴行事件が起きたりしていた。
「残念」
【バスケ王子】のヒロト様は、
頭もスポーツもできて、お金持ち。
男にも女にも優しいお坊ちゃんキャラだから。
……なので、
ヒロト様度20%減だね。
「次は大村駅――お降りの方はお忘れものなどないように……」
なんと、
私たちが降りる駅でそのイケメンも、出口の方を向く。
プシュー……!
そして、扉が開いたかと思うと、
颯爽と勢いよく、そして尚且つ誰にもぶつからないで降車していった。
しゅ、俊敏だー、あのひと。
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