11人が本棚に入れています
本棚に追加
数十分がすぎた。
開け放たれたドアの向こうからは、なんの物音もせず、斑鳩メイ子(木玉倉製作)につながれたロープがスルスルと送り出されていくばかりだった。
いったいこれからなにが起きるのか、期待と、それを大幅に上回る不安が雪実の胸にこみ上げていた。なんらかのアクシデントが起こったらロープを引っ張って斑鳩メイ子(木玉倉製作)を救出する手筈であるが、どんなアクシデントに見舞われるか想像もつかず、果たして自分なんかに対処できるだろうかと不安がつきない。
一方、木玉倉はコントロール装置のいくつものメーターを凝視していた。メーターの針は激しく動き、べつの丸い表示装置には、おそらくロボットの目を通して見る超空間が映し出されていた。
「これはすばらしい。このデータはまさしく驚異だ」
木玉倉は興奮しているが、雪実にはなにがそんなにすごいのかわからない。
むむ、おお、なるほど、そうきたか、などと一人で声をあげている横で、雪実は退屈だった。
「あの……いったいいつまでこうしてるんですか?」
おずおずと声をかけた。
そのとき、
「まずい! ロープを引っ張れ!」
木玉倉は振り返って叫んだ。
「はい!」
その切迫した声に驚いて、雪実はとっさにロープをたぐりよせる。
最初のコメントを投稿しよう!