メイ子がいっぱい

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「急げ、急ぐのだ!」  横から言われて、雪実は額に汗を浮かべながら、力一杯ロープをたぐりよせた。なにが起きたのかさっぱりわからないが、とにかく緊急事態なのは理解できた。  ドアの向こうから、ロボットの手が出て、ドアの框(かまち)をつかんだ。そして、ぐいと上体を引き上げて、ロボットがドアから出てきた。  が、出てきたのはそれだけではなかった。 「なにーい!」  木玉倉が目をむく。  ドアの框をつかむ手が次々に現れたのだ。 「ひいいい!」  雪実も腰を抜かす。  そいつは貞子のように、這うようにしてドアをくぐり抜けてきた。しかも何人も。  だが、それは貞子ではなく、斑鳩メイ子だった。メイド服を着た何人もの斑鳩メイ子が這い出てきたのである。  メイ子たちはキョロキョロと室内を見渡し、 「ここはどこ?」 「いまはいつ?」 「わたしはメイ子よ。よろしくね」 「おなかすいたー」 「おかえりなさいませ、ご主人さまー」  などと、口々に言う。声も同じだった。 「どうなってるんだ?」  雪実は床に尻餅をついた姿勢で当惑していた。超空間のアクシデントは雪実の予想を遙かに超えていた。  が、木玉倉は一人で合点していた。 「そうか、そういうことなのか。……おそらく、こいつらはすべて本物だ」
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