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「よし、俺が直接調べてくる」
柳子の横でディスプレイを見ていた田仲正義が作業着を羽織り、部屋を出て行く。
玄関を出ると、狭い通路を走り抜け、階段を2段跳ばしで駆け上がった。身長180センチ・体重90キロのたくましい体は、まるでゴリラが走り回っているかのようだった。
2階から5階まで、十秒ほどで達すると、廊下の突き当たりの505号室の前まで走りきった。
木玉倉研究所というプレートが貼っているドアの前で、じっと様子を探る。
しかし、防音性が高いせいか、室内の様子をうかがい知ることができない。
正義はポケットからケータイを取り出す。太い指でダイヤルしたのは、204号室の田仲柳子である。
「今、505号室前についた。見たところ、なにも異常はない」
「質量の増加は止まったわ。時空間の歪みもなくなった。でも、気をつけて。なにかが起きたのは間違いないのだから」
「了解した。少しアクションを起こしてみる」
通話を切った。
さて――。
ケータイをポケットにしまう。
もちろん、505号室に最近越してきた木玉倉狂介という男については詳しく知っていた。
それによれば、自称科学者で、なにやら発明を生業としているらしい。たしかに某企業に売り込んだりして、ある程度の実績はあるようだが、同時に常人の思考を超える、奇妙な研究も多くおこなっていた。
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