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木玉倉がそこに居を構えるのには理由があった。
自分の科学的興味を満足させることには血道をそそぐが、それ以外にはまったく頓着しない彼が、目下の研究課題として取り組んでいたのが、時空間移動――平たくいえば、タイムマシンの開発だった。
それには、常人の常識を遙かに超える理論を展開する必要があった。その過程で、レジデンス茜台にたどり着いたのだった。
「時間を飛び越えるためには、時空を歪ませることが肝心だ」
と、木玉倉は持論をふりかざす。
「そのエネルギーは独特の形態を持つ。それが、どういうわけかこのレジデンス茜台から発せられているのだ! 時空間移動装置(タイムマシン)を実現するには、そのエネルギーの発生源を突き止め、解析しなければならない」
だから、空いている505号室を新たな研究拠点に定めたのだった。しかも隣の504号室は空き部屋で、少しぐらい物音を立てても苦情は来ない。
木玉倉は、さっそくリビングに実験設備を設置した。
宅配便が運んできた大きな梱包を解くと、リビングに所狭しと並べていく。それは素人には推し量ることのできない、「なにか」だった。
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