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後ろを振り返ると後悔しかないからいけないや。
前を望めど、不安の靄(もや)に阻(はば)まれて何も見えやしない。
隣(となり)に目を遣(や)っても誰も居なくて救いが無い。
足下に目を落とすと、居場所が無い。
そのことに改めて気付かされたとき、浮遊感に足を吊るされた。
そうだ、今、私落ちてるんだった。
上を見上げる。大事にしてた大切なものが、そこに見える。
手を伸ばす。けれど、届かない。寧(むし)ろ大切なものはどんどん離れていく。
それならーー
手を下ろした。
もう望まない。望みさえしなければ、絶望することはないのだから。
見たくない。聞きたくない。
固く目を閉じた。両手で耳を塞(ふさ)いだ。体を丸めて小さくなった。
小さくなって、小さくなって、豆粒ほどになって、終(しま)いには消えてしまえたらいいのにな。
【終】
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