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「お兄様…入ってもよろしいですか。」
会議のあった日の夜に妹が王城の部屋に訪ねて来たので、入ってもらう。
「どうしたんだい…今日は…珍しいね。」
エリーが本当にわかっているのか、確認の意味も込めて昼間の事は知らないふりをする。
するとエリーがいきなり語り出した。
「私は…お母様が亡くなられてから…魔族を憎んできました…そして、裏切ったという人間も…
その為に…人を踏み、権力を振りかざし…
勇者を…その行動を黙認…彼の気分を害さないようにしてきました。
お父様の命令もありましたが…私もそれを望んでいたからです。
あれほどの魔力を持ってるなら…魔族もと考えたからです。」
「そうか…それで…それを何故私に話したのだい?」
「今日…風帝様に言われたのです…
私は…いらない存在だと…
ですがその時、私は何も感じませんでした。
無理だ。どうでもいいと考えていたからです。
しかし、風帝様は初めは冷酷に話しをしていたのですが、お兄様の話が出た時…
その胸の奥にある感情が溢れてきて、私はとても苦しくなりました。
その感情が私にも、流れ込んできたのです。
悲しみ…苦しみ…沢山の感情がありましたが
中でも一番感じたのは…
風帝様の自分自身に対する怒りと優しさ、愛情です。
私はその時…気がつきました。
自分がなんて愚かだったのだろうと…
お母様を失い、苦しみ、悲しみの中にいるのは私だけでないと…
国を守る事は、国民を守る事だと…
国民の成長は国の成長…国民無くして国は成り立たない。
そして、常に国民の気持ちを考え行動する事。
それらの教えを忘れ、国民を傷つけていた私はどうしようもない屑になっていた事に…」
お兄様は、私の話に口を挟む事なく聞いてくれていた。
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