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胸の痛みを打ち消すように、主任の首に手を回す。
すると抱きしめられていた腕に更に力がこもった気がした。
「今日はもう帰るぞ」
やっと離された唇。
主任の方を見上げると満足げに笑っていた。
離れた唇が寂しいと思った。『もっと』って心の私が叫んでる。
「そうですね…」
しかし、そんな可愛いセリフが言えるわけもなく、抱きしめられていた主任から離れた。
途端、足が震えた。一人で歩こうと足を前にだそうとしているのに、全く力が入らずその場に立っているのが精いっぱいだった。
「ったく…」
そんな私を見てか主任は私の腕をとって支えてくれた。
「部屋まで送る」
「そんな…大丈夫ですよ」
「心配すんな上がらないから。これじゃこっちがおちおち帰れないっての」
回転が鈍くなった頭で、今日部屋散らかってなかったっけとか玄関掃除しとけばよかったとか様々な考えが頭の中を駆け巡っていた。
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