夜風にあたって

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「多少落ち着いてきました」 当たり障りのない言い方になってしまった。 途端沈黙が訪れて、胸の鼓動が早くなる。 何の音も聞こえないただ風がぴゅーっと吹く音だけが耳にこだまする。 何も話さずただ前を見つめるだけの主任が何を考えてるのか分からなくて、怖かった。 「あ、もうなくなっちゃいました。やっぱりもう一缶買えばよかったかな」 沈黙に耐えきれなくなって、私はカクテルを一気飲みしそう言った。 「明酒強いの?」 「そうでもないですよ。普通です」 主任の顔を覗くように見ると、当たり前に視線が重なった。 急に酔いが回ったのか全身が熱くなっていく。 さっきまで鮮明に見えていた主任の顔が段々とぼやけてきた。 やばい…。酔ったかも…。
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