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「もういいよ。はい、ヨシのお弁当。」
私は項垂れ気味のヨシに
バッグから取り出したお弁当を差し出した。
「サンキュ」
「私さ、後悔してるんだ。流されてしまった事、全てに」
「流された?」
「ヨシに甘えて流されてしまった事、リューマを忘れたくてヨシで塗り替えようとした事。綾野さんに言われてる事間違ってないし。
軽薄だったと思って。自分が……本当に」
お弁当を食べるのを辞め、ティッシュで涙を拭った。
ヨシが、哀しそうな瞳で私を捕らえ、複雑な表情を浮かべている。
「甘えていいんだよ。流されるのが何がいけないんだよ。綾野に言われた事鵜呑みにするなよ」
「だってそうじゃない?リューマと離婚してすぐ、ヨシを再婚相手として意識しちゃって、いつもそれを打ち消そうとしてた。まだいくらなんでもそんな風に考えるのは早すぎるって」
「オレがそう迫ったんだから意識してもらわなきゃ困る。瑠衣だって、父親がいた方がいいに決まってるだろ」
ヨシは弁当箱を広げると手を合わせてから、食べ始めた。
「迫られても、ヨシと再婚した方がいいかもって分かってても、……体を受け入れても、心が全然追いついていってないの……」
「そんなの深く考えなくていい。時間が解決してくれるよ。言っただろ。リューマを忘れさせてやるって。だからミユキも忘れる努力をして欲しいんだよ」
「…………」
忘れる努力って……
どうやってするんだろう……
どのくらい時間が経てば
リューマを忘れられるんだろう……
考えても答えは出ない。
だから今は育児と仕事でひたすら気を紛らわすしかないのか。
「……誕生日、行きたい所決めた? どこかいい思い出作れる所へ行こう。遠出してもいいし。泊まりで温泉とか」
「お店、大丈夫なの……?」
「ミユキの誕生日の日には行けないけど、店の連休で行ける」
「…………」
私の……誕生日か……。
なんだかちっとも嬉しくない。
20代最後の29才。
でも、ヨシの祝ってくれようとしてくれる気持ちは嬉しかった。
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