約束とお守り

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「そんなわけないか」 「うん?」 「いや、なんでも。なあ、せっかくだし、なにか記念に買っていかないか?」  見たところ、天然石の値段はピンからキリまであるようだが、それなりのものなら高校生である俺たちでも買えそうだ。  こちらの提案に雪歩はぱあっと表情を華やかせて、コクコクコクと何度も首を縦に振った。 「それ、いいと思う! ボクも、せっかくだしなにか買いたい」 「石にはそれぞれ意味があるんだろ? せっかくならそれで決めようぜ? 例えば……」  “恋愛”、という言葉が真っ先に浮かんでくるが、頭から追っ払う。  今日のお出かけで少し棚に置かれているが、俺は先日雪歩に告白して撃沈した身なのだ。  雪歩とのこれからの関係もあるのだから身の程は弁えておかなくてはならない。  とすると、俺と雪歩に合った無難な言葉といえば…… 「“友情”、なんてどうだ? ある?」 「友情。それなら有名どころで……」  棚の上に置かれた無数の小皿から、雪歩は迷わず赤みを帯びた石を取り出す。  その石は、赤と黒が混ざり合ったような少しおどろおどろしい色をしていたが、雪歩に手渡されるとファンタジーの世界でいう魔法石のようなものに近くて、見れば見るほどかっこよく見えてくる。  まるでこの石の中には地獄の禁忌の力が封印されているみたいだった。
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