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「ねえ人見? ボクが人見のお守り、作ってもいいかな?」
「いいのか?」
「うん。だって人見、きっと裁縫とかできないでしょ? 初めからボクが作るつもりだったし、いいよね?」
「俺の中学校の家庭科の成績が2だとよくわかりましたな」
「だと思ったよ」
苦笑いを浮かべているこの子は、きっと家庭科の成績は5段階中5なのだろう。
根拠はないが普段の雪歩の性格や女子力の高さ、言動から容易に想像ができた。
「次のアルバイト、一緒になったら渡すからね?」
「わかった、楽しみにしてるよ。俺たちだけのお守りをさ」
「……うん! ボク、人見のために張り切って作るからね!」
パワーストーンの専門店を背にすると、雪歩はなにが嬉しいのかそう言って前に進み出る。
そして腕を後ろに組むと、屈託のない笑顔を振り向きざまにこちらへ向けた。
「今日は楽しかったよ、人見?」
「ああ、俺も雪歩と一緒、すげえ楽しかったよ。また、遊ぼうな?」
「また……」
純真な気持ちに対し、こちらも素直に答えたつもりだった。
だが、雪歩はなぜか「また」という言葉を抱きしめるように、両手を胸にあてている。
思い入れ深く、大切にするように。
胸元から少しだけ俯いていた顔に目を当てると、雪歩の顔は真っ赤に紅潮していた。
こちらの視線に気が付いたのか、ゆっくりと顔をあげてくる。
ポーッと熱っぽい瞳がこちらを捉えていた。
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