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「そっか、ボクまた人見と遊べるんだ……。約束したんだもんね……えへへ」
その瞳はまるで甘い言葉を聞かされた乙女のような顔で……俺は思わず生唾を飲み込んでしまった。
すごくかわいい、俺は雪歩にそう感じてしまった。
だが今はそういう気持ちを悟られてはならないと自制し、「コホン」と咳払いを済ませて俺は平静を装う。
一体どうしたのだろう、初めて垣間見る雪歩の一面に様子を窺わずにはいられなかった。
「ゆ、雪歩? どうしたんだ?」
「あ、うん……えっと……なんでも、ない。ほんとに……なんでもない、んだよ?」
「そ、そっか」
上目づかいに語るその子の恥じらいが入り混じった表情は、間違いなくなんでもない顔をしていなかった。
だが、本人がそう言うならばとここは野暮に首を突っ込まず話を合わせておくことにする。
……そのあとの駅までの帰り途中、お互いになにかを一言二言話した気がするが、内容は頭に残っていなかった。
脳内に埋め尽くされるのは、初めて見た雪歩の乙女な一面だ。
熱が入り潤みきった目、自分でもよくわからないと困ったように眉を潜めた表情。
……動揺した声。
男の子が向けるにしては、どう考えても少女すぎる恥らった反応。
それなのに雪歩はまだ、“友情”だとか“男のロマン”と拘っている。
雪歩は間違いなく女の子だ。
根拠はないけど1日を過ごして確信する。
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