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けれども、どうして雪歩は女の子であることを隠すのだろう。
今更ながら疑問が残る。
その答えは、この夏休み中、雪歩本人から聞かされるときが来るのだろうか……?
駅に着くころには、雪歩の様子はいつもと変わらないものになっていた。
「それじゃあ人見? またね?」
「また、ブロンズでな?」
もうすぐ電車がくるということで、切符を通して改札口の向こう側へ行く雪歩。
アナウンスが雪歩の乗る市街地方面行きの電車の到着を知らせていた。
徐々に遠ざかっていくあの子の距離が、未だ残っている心の距離のように感じられて寂しくなる。
改札口向こうの通路を渡り歩く途中、雪歩がこちらに手を振ってくるので、俺も同じように送り返してやる。
それを受け取ると雪歩はふにゃりと笑って、また“いつも”のように「えへへ」と柔和な笑顔を浮かべた。
……大好きな表情のはずなのに、今だけはほんの少しだけ恋しくて、切なくなくて、胸がギュッと締め付けられた。
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