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彼の名前は、藤川薫(ふじかわかおる)。高桐院(こうとういん)学園三年、生徒会長。僕は彼の秘書を務めている。
高校生で秘書だなんて仰々しいと思うけれど、名門校ならばそういうものかもしれないと思わせられる特異さがこの学校にはある。
彼を支えるべき秘書でありながら、僕は薫に特別な想いを抱いている。
側にいたい、笑う顔が見たい、触れてみたい。それを恋愛感情と呼ぶのかはわからない。
でも、まっすぐで清らかな芯を少しも曲げようともせず、僕の言葉でかろうじて立ち、前に進むあの人の側にいながら、特別な気持ちを抱かないでいることなんてできるんだろうか。
どんな気持ちであれそれは、彼に伝えることはおろか誰にも言うこともなく墓まで持っていく覚悟の想いだ。
いつも行動を共にしている秘書との間に誤解だとしても変な噂が流れたら薫の立場が相当悪くなるのは目に見えている。
それは自分に対する言い訳だとも知っている。決して受け入れられる想いではないという事実から目を背けるための。
こんな気持ちを薫に知られたら、全てが終わる。もう、そばにいられない。
触れられなくてもいいから、そばにいたい……
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