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「……!」
ライトを浴びて浮かびあがった車のフロントガラスには。
私が見たくないものが映っていた。
それは。
助手席に、立花 葵を乗せた。
東条社長の姿……。
私に気付かない二人を乗せたまま、漆黒の車は夜の闇に溶けるように去って行った。
前だったら。
あんなツーショットを見たって、ただの社長と秘書だと思ってた。
でも、今は。
それが、どこか特別な光景に見えてしまう。
まだ仕事があって、二人でどこかに向かってる?
それとも……。
仕事は、もう終わっていて、プライベートとして、出かけたの?
社内の噂と、佐倉さんの言葉が脳裏を過る。
改めて、二人並んでるのを見たけど。
やっぱり、すごくお似合い。
誰も、入る隙間なんてないように。
私はうつ向いて、肩に掛かったバッグの中に、ゆっくりと手を入れる。
そして、スマホを取り出した……。
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